歯科疾患の進行やリスクは、生活習慣のほか年齢にも大きな影響を受けるので、健康日本21の目標と指針は年齢別に示されている。若年、壮年世代には一次予防として自らの生活習慣の改善を働きかける一方で、セルフケアに限界があらわれる高齢世代においては、「80歳における20歯以上の自分の歯を有する者の割合を20%以上に、60歳における24歯以上の自分の歯を有する者の割合を50%以上に、それぞれ増加させる」という具体的な目標を達成させるために、行動指針として「定期的な歯石除去や歯面清掃」ならびに「定期的な歯科検診」を受けている者の割合を30%以上にするという、2次予防的な手段が推奨されている。若年者で顕著にみられる刷掃指導等による予防歯科の実践の効果は、中高齢者においては十分に認められないため、プロフェッショナルケアに期待がかけられているのである。
歯科診療所の受診者の1年あたり平均喪失歯数の調査から、何らかの症状のある時にのみ歯科診療所を受診する者は加齢に応じて歯の喪失傾向が大きくなるが、定期的に予防処置や指導を受けている者は、年齢にかかわりなく1年あたり平均喪失歯数が0.1歯前後にとどまることが示されている。また、成人歯科検診の15年間の実績は健診受診回数が多い者ほど一年あたり喪失歯数が少ない結果を示しており、特に診査結果に応じた歯科衛生士による個別指導の利用有無がその前後の喪失歯数に影響している。
健康日本21の行動指針は上のような実績にもとづいているが、目標の達成のためには、住民が歯科医療機関を定期的な予防処置や指導などの健康管理機関として活用できる状況が不可欠である。加齢に応じて国民の歯の喪失傾向が大きくなるという現実は、実は、圧倒的多数の歯科診療所が、いまだ健康管理を担う機関として機能していないということを示す。
「歯科医療現場の地域保健の試金石」から
日本歯科医師会雑誌 Vol.57 No.5 2004-8